アンティーク時計店主のつぶやき

オーストラリアにある高級アンティーク時計専門店メルシーウォッチの店主が綴る、何気ない日常の生活や仕事にまつわるお話しです。

ゆるさ=ゆとり?

この写真の数字、何の数字だかわかりますか?

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実は私が利用する近くの駅の、列車の運行率と定刻通りに運行された率なんですよ。

この数字だけを見ると、しっかり電車も運行されているように見えますよね。

でもこれを実際の数字に置き換えてみると、「あれ?あんまり時間通りじゃないよね?」と、そう思われるのではないかと思います。


この駅を通る電車の数・運行数は、ちゃんと数えたわけではないのですが、おそらくざっとした数で1日に500本ほど。

1か月間だと500本×30日で、だいたい15000本が運行されている計算になります。

この数を上の割合に当てはめてみると、運休された数は225本。1日あたりだと7.5本。

さらに定刻通りに来たとはいっても、1分早い~5分遅いという時間までOKなので、定刻より6分間の前後の幅があるのを定刻としているので、日本とは大きな違いだと思います。

その時間帯よりも遅くなった数だと、なんと1155本にものぼり、1日あたりだと38本ほどが定刻通りには来ないという計算になるわけです。


1日あたりに7本も8本も運休になるなんて、日本だとあまり考えられないことですよね。

ただこちらだと、結構普通にあることで、時間になっても来ないななんて思っていたら、急にアナウンスがあって、この便は運休となりましたということが良くあります。

ラッシュ時なら5分間隔ほど、それ以外の時間は10分から15分間隔での運行なので、ラッシュ時以外に急に1本運休になったりすると、20分・30分待つことになってしまうこともあります。

予定通りに運行されないので、こういった運行率を各駅に掲載して、約束している目標より下回ると、お客さんに無料券を配布することを約束していたりするんです。(目標はかなり低い数字ですが・・・)

このあたりは日本とは大きく違うところですね。



私がオーストラリアに来たばかりの頃、日本と違うところに苛立ちを感じるところがたくさんありました。

それは、特にサービスが遅かったり悪かったり、時間通りでなかったり。

今はかなり改善されたように思いますが、電車もこんな感じで比較的ゆるい運行状況なわけですから。



でも最近になって、私はこう思うことが良くあります。

日本のように、時間通り・確実に最高のサービスを提供する、それはそれで非常に良いことですが、そのサービスを当たり前に受けることは、今度は自分自身が、そのサービスを提供する側にも回らなければならないということ。

夜遅くまで開いているお店、日時や時間指定をして配達してくれる荷物、時間通りにやってくる電車、インターネットで今日買ったものが明日には届く。

日本に住んでいると当たり前のことではあるのですが、実は海外に出てみると、それが異常である・当たり前でないことに気づかされるのです。

心地よい・完璧なサービスを受ける、でもその代りに、自分自身もその心地良い・そして完璧なサービスを提供する側にも回らなければならない。

求める側からすれば時間通りに来て当たり前、そして反対側の立場からすると、それは時間通りに進めなければならないということで時間に追われること。

パソコンやインターネット、輸送のインフラなどが整備されてからですから、だいたいここ10年くらいのことでしょうか。

なんだか日本の中が息苦しく感じるのは、求めるのと同時に提供もしなければならない、当たり前の基準が高くなりすぎているからではないかと思えて仕方がないのです。



その反面、オーストラリアはなんでもかなりゆっくりとした、最近の言葉でぴったりなのは「ゆるい」国。

サービスが遅れたり悪かったり、改善はされてきてはいますが、日本と比べると、日本から来たばかりの人は苛立ちを感じることがたくさんあります。

でも、それは裏返せば、ゆっくりしている分、実は自分自身もゆっくりとできるということでもあるのです。

日本だと仕事のデッドラインは、本当に徹夜をしてでも仕上げるデッドラインですが、ここだと「デッドラインが伸びる」ことがあるのですから。(伸びて当たり前という感覚だといっても過言ではないかも・・・)

国民性や環境というのもあるのでしょうが、求めすぎることは、却って自分の首を絞めてしまっているような気がするのです。

人生の4分の1以上をオーストラリアで過ごし、やっとオーストラリア流に慣れてきた今日この頃です。

今更変えられることではないでしょうが、あんまり駆け足すぎるのも良いことではないですよね。

そんな時には、コチコチとぜんまいの力で時を刻む、アンティーク時計で癒されてみませんか?と、最後は仕事の話で締めてしまうところは、私もやはり日本人ですね。