アンティーク時計店主のつぶやき

オーストラリアにある高級アンティーク時計専門店メルシーウォッチの店主が綴る、何気ない日常の生活や仕事にまつわるお話しです。

形見の時計

少し以前の話ですが、お客様から形見の時計だということで修理を依頼されたものがありました。

1920年頃のものだったと記憶しているのですが、長針が無くなってしまっていて動きません。

形見なので直るのならぜひ直して欲しいという熱意のあるお願いだったので、こちらもお力になれればと思って、部品を取り寄せたり何度か調整させていただいて、動くようになりました。

メールをいただきお電話もいただいたほど感謝していただいたことが、こちらとしてもとても印象深く、こういう仕事はさせていただいたほうがいいのではないかと考えさせられる出来事でもありました。

 

最近は本当におかげさまで当店をで時計をお買い求めいただくお客様が増えているので、こちらの技術者ができる仕事の量、こちらが十分な対応させていただける・当店のお客様への対応がおろそかにならないように、修理はこちらでお買い求めいただいた時計もしくはお客様の時計のみに限らせていただいています。


というのも、本当に動かない時計を直すのは手間も時間もかかるわけです。

仕事や利益という面から考えれば、どんな仕事でもお受けするべきだと思うのですが、お買い求めいただいたお客様にご迷惑をかけたり、対応がおざなりになってしまうのはこちらとしては本末転倒。

そんなことはどんなにお店が大きくなってもやりたくはありません。


ただ、今回はどんなお店に持ち込んでもダメだった・時計すら見ずに断られた上、大切にされている形見の品ということでお受けしましたが、こういった特別な時計は修理をさせていただくべきなのかもしれませんね。

形見の時計修理に関しては、ちょっと考え直してみたいと思います。